皮革製造100年の老舗・協伸の革づくり

姫路の歴史がバックボーン。革素材メーカー、協伸

 ZALEZAを手がけるのは、兵庫県姫路市に工場をかまえる協伸株式会社です。創業100年を超える革素材メーカー、老舗のタンナーです。ただ、革をつくる会社といっても、一般にはなじみの薄い業種だと思います。では協伸とはどういう会社で、どういう成り立ちなのでしょう。ZALEZAブランドを展開する協伸について略解します。少しかたい話になりますが、お付き合いいただければと。

まずご案内したいのが、協伸のある姫路について。全国的に名が通る国宝・姫路城の影であまり知られていませんが、姫路には日本の皮革の聖地であるという歴史的事実があります。その伝統を受けて現在、兵庫県の牛革生産量が全国の約7割を占めるという現実につながっています。姫路で創業し、姫路で皮革製造業を続けている協伸にとって、これは大きな拠り所です。協伸の背景といえる姫路の話から始めます。

1000年の歴史が流れる姫路伝統の革づくり

黒漆を塗って仕上げられた江戸時代の作品

 姫路市を含む兵庫県の西部一帯は、古くから播磨と呼ばれてきました。この播磨で、はるか昔、1800年以上も前に、革がつくられていたという伝説が残っています。聖徳太子の時代より数百年もさかのぼる古代。諸説伝えられますが、残念ながら文字の記録は残っていません。

 はじめて文書に記されたのは、平安時代の書物「延喜式」でした。西暦927年、播磨が「皮革の産地」として記録されました。このときから数えると、姫路の革づくりは1000年の伝統産業といえるわけです。

 以降、時代が下るにつれ、皮革生産は盛んになっていきました。安土桃山の戦国時代には武具や馬具に姫路の革が使われ、江戸時代は姫路藩の財政を支える特産物となりました。

 明治に入っても革づくりの歴史は続きます。クオリティも高かったようで、アメリカやヨーロッパで開かれた万国博覧会にたびたび出品されました。海外に開かれたばかりの明治期の日本。この時代に外国に紹介したい日本製品の代表に選ばれたことは、いま以上に意味があったように思われます。1900年のパリ万博では銅賞を受賞しました。

白く、やわらかい、素朴なレザー。ユニークな製法の 白なめし革(姫路靼)で創業

白なめし革、姫路靼の再現

 江戸時代から昭和初期にかけ、姫路でつくられ、高く評価されたのは、白なめし革(姫路靼・ひめじたん)と呼ばれるレザーでした。少しアイボリーがかった白と、風合い豊かなシボ(革表面に刻まれた小さなシワ)、やわらかさが特徴。この革が姫路産レザーの名を上げました。

 製法がユニークです。皮を川に浸けて脱毛し、足で踏んだり、ヘラをかけたり、天日に干したりして、仕上げていきます。現代の製法なら製造時、植物タンニン剤やクロムを入れてなめすのに対して、白なめし革(姫路靼)は、なたね油と塩だけ。人間と自然の力でつくる素朴でオーガニックなレザーというわけです。

 姫路市のなかでも高木エリアには、白なめし革を生業とする者が多く集まり、革づくりに励んでいました。高木エリアのすぐ横に市川が流れているからで、この川に浸けないと革は白くなりませんでした。この製法は当時、研究に訪れたドイツ人学者には理解できず、不思議がったそうです。

 協伸は1910年、白なめし革の製造で創業しました。創業者の金田盛易も高木で生まれ、この環境のなかで革づくりに打ち込みました。

 一時代を築いた白なめし革ですが、昭和40年代を過ぎると、高木エリアでも白なめし革に携わる人は徐々に減少。品質と効率性を求める時代の流れには逆らえず、植物タンニンなめし、クロムなめしに取って変わられました。

 白なめし革の作り手がほぼ皆無になった2011年、協伸では白なめし革(姫路靼)再現プロジェクトを実施しました。古来の製法をこのままなくしてはいけない、少しでも知る人が残るあいだに次代へ残していきたいと自分たちの手で再現にチャレンジ。自然を相手に気温を読みながらの作業はなかなか大変でした。一朝一夕ではたどり着かない技術も必要でした。完成した革の出来映えはというと、まあそれなりといった感じです。再現の記録は協伸株式会社のホームページで紹介しています。よろしければご覧いただければと思います。

 白なめし革の製造を止めた後の協伸は、おもに靴用の革を手がけるようになりました。戦前は軍靴の底革、戦後は安全靴の革でした。

 その後二代目を継いだ二郎は、開発意欲も高く、エバースキン、トコベロアなどの新しい革素材を次々と発明しました。

ドイツの名門・国立皮革技術学校で、マイスター資格を取得した三代目

ドイツ国立皮革学校の卒業儀式

 皮革製造を家業とする金田家の三代目として現在の社長である金田陽司が生まれました。1961年生まれの陽司は、高校卒業後、西ドイツの皮革学校で学ぶため、単身渡独。それまで目にしてきた革づくりは、職人の経験と勘だけに頼ったものだったため、ドイツでの修行で科学的な見地を加えられるようになりたいと考えたからです。

 住み込みのアルバイトをしながらドイツ語を学んだあと、世界中のレザー関係者に知られる名門の国立皮革技術専門学校に入学しました。皮革素材の製造技術や薬品のノウハウなどを修得し、ふつうの外国人なら2年6か月を要する過程を2年で卒業することができました。

 1984年、卒業にともない、LEDER TECHNIKER(レダーテクニカー=皮革技術指導者=オーバーマイスター)の資格を得ることとなりました。これは、皮革についてより高い知識と技術を身に付けているものにのみ与えられる、ドイツの国家資格。「オーバーマイスター」は、ドイツの産業発展を支えてきた「マイスター」の上位資格にもなります。

伝統とマイスターが融合し、レザー業界で独自のポジション

 ZALEZAを手がけるのは、兵庫県姫路市に工場をかまえる協伸株式会社です。創業100年を超える革素材メーカー、老舗のタンナーです。ただ、革をつくる会社といっても、一般にはなじみの薄い業種だと思います。では協伸とはどういう会社で、どういう成り立ちなのでしょう。ZALEZAブランドを展開する協伸について略解します。少しかたい話になりますが、お付き合いいただければと。  まずご案内したいのが、協伸のある姫路について。全国的に名が通る国宝・姫路城の影であまり知られていませんが、姫路には日本の皮革の聖地であるという歴史的事実があります。その伝統を受けて現在、兵庫県の牛革生産量が全国の約7割を占めるという現実につながっています。姫路で創業し、姫路で皮革製造業を続けている協伸にとって、これは大きな拠り所です。協伸の背景といえる姫路の話から始めます。